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医食同源(2)高血圧と味噌・醤油について

2009年2月3日

塩分は控えめに

高血圧を下げる目的で薬を飲むことも降圧方法として良い手段ではありますが、服薬のみで十分に血圧を下げることにはいささか無理があります。特に我々日本人独特の食生活が「脳卒中多発国日本」の源であるような気もします。服薬以外の血圧降下に有効なものとしてAHA(アメリカ高血圧学会)は体重のコントロールが一番大切であり、その次に塩分の制限やカリウムの摂取(主に果物や野菜から摂ること)を勧め、さらに運動療法を挙げている。今回は塩分制限の一環としての味噌・醤油の摂り方について勉強してみます。

われわれの食生活に古くより取り入れられ馴染んできた味噌と醤油は昔は不可欠の栄養食品でありました。舌に馴染んだ味でもあります。しかし現在ではその「塩害」がいささか気になります。口にしないでおくのは忍びないが控える対象です。

塩と蒸し大豆と麹を混ぜて樽などに寝かせて発酵させたものが味噌ですが、その折上澄みとして湧き上がってくるのがいわゆる醤(たまり)でこれに塩や香味料を加えたのが醤油となるいわば双子の関係でどちらも塩分をたっぷりと含んでいます。

古くからアジアでは稲作を中心に農業を営んできましたが米から蛋白質などの栄養素を補うことは不可能でした。従って畔道にも植えられる大豆(畔豆)が米とコンビになって蛋白補給源となったのは必然の知恵でした。東南アジアでは灌漑用水路の小魚を米と混ぜ保存食としたのが魚醤の源です。ベトナムのニョクナム、タイのナンプラーなど有名で、日本にも秋田のハタハタを使ったしょっつる、能登のいしり(いか)、いしる(鰯)があります。

人間は生命や体を維持する蛋白質を補うため種々のアミノ酸を摂る必要があり、知らず知らずのうちに体得した知恵が味噌や醤油の原点だったと思われます。

アミノ酸を多くつなぎ合わせてペプチドを作りそれがまたつなぎ合わさったものが蛋白質です。人体の蛋白形成には20種類近くのアミノ酸が必要ですがこの内どうしても不可欠のアミノ酸10種類前後を必須アミノ酸と呼びます。大豆はその必須アミノ酸をほぼ100%含む良質の蛋白源であり、米と混ぜて食べる味噌は立派な栄養食品となる訳です。又この味噌の上澄みとして出来る醤油には発酵する過程で香りや旨みが加わり美味しい調味料となった訳です。大豆と塩と米麹を混ぜた米味噌は米麹を混ぜる比率により仙台味噌や京都の白味噌などになります。米麹を少なくすると八丁味噌のように黒味を帯びる豆味噌となります。麦麹を入れた九州のそば味噌も有名です。すり鉢ですり下ろす前の荒い豆や野菜、麦などを粒状に残したものが「なめ味噌」であり和歌山湯浅の金山寺味噌もこの類です。今日の日本の醤油は小麦に麹をつけて塩水を加えて発酵させたものを搾ったものです。

味噌は立派な保存食で魚の獲れる海から遠い山国の冬の保存食として、或いは戦時の兵糧として利用され、又民衆の毎日の栄養補助剤としての味噌汁や味噌煮物などに活用されてきました。

池波正太郎の鬼平犯科帳によく酒の肴として登場する「なめろう」は鯵などの小魚のタタキと葱,生姜などを味噌と混ぜて練ったものでなかなか乙なものです。
しかし食べ過ぎると塩分の摂りすぎとなることは自明の理で味噌汁一杯に1.5g~2.0gの塩が含まれているし、醤油は小さじ1杯に1gの塩が含まれています。

本院の患者さんで夏場は血圧120/80位にコントロール出来ていた方が、11月から冬の間は150/90前後になる方が多い。詳細は明らかではないが3g前後の塩分が夏場に出す汗や多量に飲む水分による排尿などで体外へ捨てられるのではないかと考えられます。つまり、服薬中でほどほどの食生活を送っておられる方は2~3gの塩を控えることにより150/90前後を120/80まで下げることは可能ではないかと考えています。

わずかとは考えずにほんの少しの努力と考えて頑張って頂きたい。

味噌の話から高血圧の話に持ち込んでいささか「手前味噌」の感じは否めませんが、日本の伝統食の中に「脳卒中の国」日本の姿が見え隠れするのも事実です。

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