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医食同源(1)塩と高血圧について

高血圧の方を診るたびに減塩を勧めている。

「塩分の多い麺類を控えましょう。漬物や練り製品のカマボコ・チクワは控えましょう。醤油やミソは敵ですよ。」と口酸っぱく言うことにしている。皮肉好きな方からみると「何とかの一つ憶え」に聞こえるようだ。なんと思われようと執拗に繰り返そうとこちらは考えて頑張っている。繰り返しこそ最大の記憶術だと割り切ることにしている。
塩分といっても1日何gまで許されるかはっきり解っている訳ではない。医学書には7g/日位が適当かと書いてある。うどんは1杯食べると約5g、ラーメンなら7g。汁を飲むのを控えるとしても1日7gはつらい数字である。
汁を飲まない状態でラーメンの塩分は約7g

「無塩人類」でしられるアマゾン流域のヤノマモインディアンは、塩をほとんど摂らないので血圧は100以下であるらしい。けれど彼らが長生きとは書いていない。
最近の研究では日本人にもいくら塩を食べても血圧の上らない「食塩感受性のない人」が2割近くはいるらしい。
その方々はうまい和食が(和食は塩が多い)思う存分食べられるので羨ましい限りであるが反面、塩分の濃い食事を続けると胃癌が増加しているかもしれないというデータもある。塩分の濃度が濃いと、胃粘膜上皮粘液を乱すらしい。その結果、ピロリ菌などの影響を受けて発癌機会が増大すると言うのである。いずれにしても塩分制限をしましょうというのが無難なようだ。

残り8割の塩分に感受性のある方は、比較的臓器障害を受けやすい方でもあるということが徐々に解ってきている。アルドステロンというNa+(塩分)を貯留しようとする人間のホルモンと塩分濃度の高い血液の元では心臓の筋肉が肥大し易くいわゆる心肥大を起こし易い。正常の人では夜間3時ごろに血圧が下がる(ディッパー型)のに対し、塩分感受性のある人は夜中血圧が下降せず(Non-dipper)臓器障害を起こし易い。塩分感受性のある方は腎臓で血液を濾過する糸球体という所の圧が高くなり、腎臓を痛め易いようだ…等々、高血圧と塩との関係の解析も進んで来ている。

かの貝原益軒も「養生訓」の中で「凡て(すべて)の食、淡薄(白)なる物を好むべし。肥濃油膩(濃く油っこいもの)の物、多く食ふべからず。生冷堅硬なる物を禁ずべし」と記している。あまり塩辛い物は控えるに限る訳である。

最後に、一口に塩と言っても、塩化ナトリウムのみではない。塩化カリウムも塩化マグネシウムも全て含む自然塩を食べたいものである。
塩化ナトリウムのみの合成塩は安けれど、味気ない。

話はかわるが、塩に税金を掛け、インド人民を管理したイギリスに対し、無抵抗塩行進を続け、ダンディーの浜で塩クラストを拾ったモハンダス・ガンディーの写真を見ながらインド独立の礎を築いたガンディーの塩に対する思いをしのぶことも大切とは考えております。
決して塩をおろそかにしてはおりません。

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